かつて九十九谷と呼ばれ、丘と谷が複雑に入り組む、起伏に富んだ街「西馬込」。宇野千代夫妻がこの地に居を構えたことをきっかけに、多くの芸術家や文人達が移り住み、「文士村」とも呼ばれた。ぶらりと歩けば、そんな歴史や文化的な風情を感じられる街であり、緑の多い落ち着いた住宅街でもある。
この西馬込の丘の上に建つ建物「ジョイヒル仲池上」は1977年築。大量供給の時代にありながら、ゆとりをもたせた共用部や、広大な敷地に対して3階建て12世帯という規模など、贅沢な建物外構は希少である。築後33年間、オーナーが時間と手間をかけ続けてきた建物からは、時間を経た味と重厚感を感じられる。
この建物の2階にある『√root』に、2010年7月から入居しているのが小林さん夫婦だ。
「以前住んでいた二子新地の1LDKの部屋が手狭になってきたので、いい部屋がないかなぁと探していたんです。西馬込にひとりで住んでいる母がいるのでそろそろ近くに住みたいと考えてこの辺りで探していたんですが、普通の間取りの部屋しか見つからなくて。」とご主人。「私たちには個室は必要ではなくて、人を沢山呼べる広いワンルームと使いやすい台所があれば良かったんです。『√root』を初めて訪れたときに、まさにこの部屋!と思って。」と奥様。
『√root』の中心にはキッチンがあり、そこに立つと部屋をぐるりと見渡すことができる。建物外観の赤レンガを想わせるキッチンタイルの明るい雰囲気も小林さん夫婦が気に入ったところ。入居後に2人が開催した新居パーティでは、23名もの夫婦共通の友人や両親を呼び料理をふるまったそうだ。
「キッチンに余計な仕切りやドアがないので、友人達も料理の準備や後片付けを手伝いやすかったみたいで参加してくれました。」と奥様。 パーティでは小上がりの畳が大人気だったそう。段差に腰をかけてお酒を飲んだり、ちゃぶ台で料理をつまんだり。子供達も小上がりに上ったり、ジャンプで降りたりと、大人達の心配をよそに楽しんでいたという。
写真右上:新居パーティの様子。
小林さんのお宅に着くと、2人しかいない部屋のなかから賑やかな笑い声が聞こえてきた。
「2人とも料理やお酒を楽しんだり、人を家に招いたりってことが好きなので一緒にいて楽なんです。笑いのツボも似ている。」と楽しそうな小林さん夫婦。
玄関のシューズボックスの上には、2人の写真や旅先の思い出の品などがずらりと並ぶ。リビングの入り口に置いてあるカフェのような手書きの“今日のメニュー”ボードから、普段の楽しい生活が目に浮かんでくる。
今日のメニューは、夏野菜のぶっかけそばに生春巻き、野菜入りのケイクサレ。それらを畳の上のちゃぶ台でいただく。白い壁や無垢材のフローリングなど淡い色調のなか、部屋に置かれた沢山のグリーンや花、料理の中のカラフルな野菜の色が映える。
「この家に引っ越して、ちゃぶ台だけは新しく買いました。平日はリビングが多いですが、休みの日は畳の上でゆっくりと食べることが多いですね。寝る場所も色々と試したんですが、畳に布団を敷いて寝るのに落ち着きました。」とご主人。 「寝っころがると、ちょうど空が見えるんです。」と奥様。
丘の上に建っているので、夏でも良い風が入り、クーラーが必要ない日もある。バルコニーからの見晴らしも良く、この夏は花火や綺麗な夕焼けの富士山を見ることができたそう。
「遊びに来た友人から、『家を買ったの?』と聞かれたんです。あまりにも私達らしい家だったので、そう思ったそうで。」と奥様。
その言葉どおり、賃貸住宅にもかかわらず、家に合わせて我慢して生活するのではなく、小林さんご夫婦のライフスタイルをもとに作られた住まいのように見える。
小林さん夫婦の住まいに溢れているもの。それは、生き生きと育つ植物、明るいミュージック、色とりどりの美味しい料理、そして沢山の友人や家族の写真。リビングの入り口には、今日のメニューボードともう1つ、友人や両親の写真を集めたコルクボードが置いてある。
実家がお惣菜屋さんだったというご主人は、昔から料理を作るのが好きで、人に食べてもらうのも好きだという。今はその楽しみを奥様と共有し、更には同僚や友人、お互いの両親を家に招き、美味しさや楽しさや明るさをみんなで共有しているのだ。
“小林さん夫婦らしい家”を想像すると、自然、沢山の友人が集まるなかキッチンで楽しそうに笑う2人が目に浮かんでくる。2人を囲む友人達もまた楽しそうに笑っている。
2010年8月28日 『√root』にて撮影:笹本直裕 取材・文:和田亜弓 (共にbluestudio)
<今回の入居物件のご紹介>
専有面積:63平米
竣工年:1977年
リノベーション完了:2010年6月
物件詳細は、借りる『√root』をご覧下さい。
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