瞬間のひらめき
濃い色の床に、真っ白な壁。「GALLO」 は、住む人が自由にアレンジを加えられるよう、余白を残したシンプルさが特徴のメゾネットタイプの賃貸物件。
この部屋にオフィスを構えるのは、ラジオ番組の制作会社、株式会社BLUE BEAT。会社設立時から8年間借りていた以前のオフィスは、年を重ねるごとに人やモノが増えて飽和状態になっていた。そんな状況で次のオフィスを探し始めてから1年後。ようやく出会ったのがこの『GALLO』だった。
「実は、不動産屋からこの部屋を紹介されたとき、ブルースタジオの設計だとは知りませんでした。ブルースタジオの物件は以前から雑誌で見て気になっていたので、後に知って運命的な出会いだと思いましたね。」
そう話すのは、代表取締役の村上雄信さん。入居の決め手となったのは、内見時、玄関ドアを開けた瞬間のひらめき。自然と、自分の理想としていたオフィス空間をイメージすることができたという。
「1940~1960年代のミッドセンチュリーが好きで、椅子や机、収納家具などを前のオフィスにいた時から集めていました。あと、仕事柄CDが毎月100枚単位で増えるんですよ。そんな趣味で集めたモノと仕事で使うモノとを、自分なりにうまく見せることができないかと、考えるようになっていました。この物件を見たときに、そのイメージと現実が合致したんです。」
モノを隠さず、思いっきり見せる
『GALLO』は収納スペースが皆無に等しい。そんな空間の中でモノをどのように所有するかは、住人の工夫が要されるところ。
「確かにこの部屋は収納が少ないですが、裏を返せばそれだけ好きなモノを置くスペースがある、持っている家具を自由にレイアウトできる。そう思いましたね。今回のオフィスでは、モノを隠すのではなく、思いっきり見せることにこだわりました。」
その言葉通り、村上さんのオフィスはデザイン性の高い雑貨や家電、グラフィックなどが目を引く、 オフィスらしからぬギャラリーのようなスペースに。
一方で、仕事柄増え続けるCDは特注の壁面収納に。大量のCDは、インパクトを与えるカッコいいインテリアの1部となり、来客者を迎え入れる。
この壁面収納裏の木の壁は、『GALLO』の設計者が仕掛けた工夫の種。シンプルな空間の唯一の特徴であるこの壁を、どのようにアレンジするか?BLUE BEATは見事に使いこなしている。
入居者スパイスで完成する部屋
村上さんが特にこだわったのは、2階のソファー空間。ローボードとCDを飾る壁面収納は、以前、収録番組で知り合った茅ヶ崎の家具デザイナー、犬塚浩太さんに特注したものだ。
「犬塚さんにはこの部屋までわざわざ来ていただきました。どうしてもオフィスで作業する時間が長いので、いかにこの環境で気持ち良い時間を過ごすことができるかを一緒に考えてもらいましたね。同時に仕事場は、コーポレートアイデンティティを表現する重要なプレゼンテーションの場所だと考えているので、自分の思い描く空間にとことんこだわりました。」
外部スタッフを併せて20~30名が出入りをしているというオフィス。このソファー空間は、クライアントとの打合せスペースであり、スタッフのくつろぎスペースでもある。この事務所を訪れるクライアントやスタッフの反応はどんなものだろうか?
「予想以上の反響があり、クライアントとの打合せも以前より効率的になりました。でもそれ以上に、スタッフの意識変化に驚かされていますよ。自分もそうですが、以前の事務所にいたときは、打合せで外出をするとなかなか帰ってこなかったんです・・・。それが今はすぐに帰ってくるようになりました(笑)。これは良い意味で想定外でしたね。居心地の良い環境になったことで、作業の効率も格段に上がりましたよ。」
賃貸物件は、デザインする段階で住む人が決まっていないのが通常。デザイナーは、立地や部屋の広さなどの条件から、そこで生活をする人を想像し、部屋の仕様を決めていく。住人が自ら工夫を凝らし部屋を使いこなして初めて、デザインは完成する。
完成後のまっさらな部屋に加えられる住人のスパイス。例え同じ部屋だとしても、住む人により十人十色の空間が生まれるだろう。
『GALLO』は、こだわりの家具や見せる収納など、BLUE BEATのスパイスが加えられ、スタッフが帰りたくなるような居心地の良いオフィスに。入居後の部屋を見られることは、デザインする側にとってもこの上ない喜びであり、次のクリエイティビティのためのエネルギーになる有り難い機会でもある。
2008年11月10日 『GALLO 306号室』にて
撮影:岩田啓治 取材:大山啓 文:和田亜弓 (共にblue studio)
※この記事は、インタビュー記事 を元に、2009年3月にリライトしたものです。
<今回の入居物件のご紹介>
東京都港区 『GALLO』
専有面積: 74.01平米
竣工年: 1964年
リノベーション完了: 2007年6月
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