サンフランシスコ-パリ-NY、そして横浜へ
ブルースタジオグループが企画監修を手がけ、アトリエ天工人がデザインを手掛けた『Glucks Garten』は、ハードなコンクリート壁が印象的なスタイリッシュな建物。ここの2階に暮らしているのは、香本果林さん。サンフランシスコ―パリ―NY。20年間にわたる海外生活の末、2008年6月に日本に帰国したばかり。日本に一時帰国した際に泊めてもらったのが、友人が住んでいる『Glucks Garten』の1室だったそう。
「日本に戻ることが決まって住む場所を探していたけど、オシャレでペットを飼っていいところがなかなか見つからなかった。友達も近くにいるしオーナーさんがとてもいい人で、ここがいいなぁと考えていたんですが満室で・・・。それが、運良く帰国の2週間前にちょうど空き部屋が出たんです。」
『Glucks Garten』は、人と動物と植物の共生を奨励している“ペット応援団付アパートメント”なのだ。オーナー自身も動物が大好きで、入居者にはペットを飼っている人が多い。
1面モルタル仕上げの床も、靴をはいたままの生活に慣れた果林さんには好都合だった。サンフランシスコから世界3都市を共に過ごしてきた猫のモーマスと2人、4都市目、横浜での生活がこの部屋でスタートした。
写真上:仏映画「L'amant」の大きなポスターは、パリの家でも飾っていたもの。住む場所が変わっても、インテリアはほとんど変わっていないそう。
モノを所有しない清さ
部屋に入ると、そこはムーディな異世界。『Glucks Garten』のなかでも1番小さく22平米しかない部屋だが、それを全く感じさせない見事な住みこなし!そして、驚くほどにモノが少ない。
写真右:部屋ではキャンドルの明かりだけで過ごすことが多い。
「洋服はここに出ているものですべて。海外にいたときは、これよりもっと少なかったくらいです。大学の頃からずっとボーイッシュなスタイルが好きで、ワードローブには黒い服ばかり。他はレオパード柄と赤いスニーカーくらいしかないかも・・・。」
暖かい季節には、かさばる冬服を大きなスーツケースに詰めて、共用部にあるトランクルームのなかへ片付けてしまう。
もともとテレビを見る習慣のない果林さんは、その分、ワインをゆっくりと飲む時間を毎日つくっているそう。上の階に住む友人もワインが大好き。お互いに猫を飼っているので、2人2匹で過ごすのもまた楽しい。
落ち着いたグレイッシュのトーンで統一されたインテリア。高級そうに見えるが、なんと、大抵の家具はIKEAやNOCEで買いそろえたもの。ベッドは部屋の大きさに合わせ、IKEAの横幅80センチのマットレスを2つ重ねている。最小限のスペースに置かれたこのベッドは、来客時にはツインベッドに早変わりする。
日本で、新しい生活のはじまり
「日本に戻ってきたという感じではなく、今、まさに新しい生活を始めている感覚なんです。」
サンフランシスコでは、100平米を超えるロフト付きの部屋に住んでいたという果林さん。当時は、Cappelliniなどイタリアの高級家具に囲まれて生活していたそう。
「行きたいところにどこへでも行けて、欲しいものは買ってもらえて・・・。海外でそんな生活をしていた時期もありました。でも、ある時、“それがすべてじゃないな”と思った。持っていた家具などもすべて売ってしまって、サンフランシスコの家は、モマちゃん(猫)とトランク1つだけを持って出て行きました。今は日本にいて、普通の人と同じ収入で、普通の人と同じ暮らしをしている。日本に来て、社会勉強をしているような気持ちなんです。」
謙虚に、正直にそう話す香林さん。住まいにおいて、広い部屋に住むことや、一流品を所有することだけが、生活を豊かにしてくれるのではない。自分のスタイルで、インテリアを工夫して楽しんだり、大事な人やペットと暮らすことからも、生活に確かな豊かさが生まれる。そして、“モノを持ちすぎないこと”を意識しながら暮らすと、自分が本当に好きなモノが何なのかをはっきりとさせ、お金の使い方のセンスを磨くことにもつながるだろう。
玄関ドアに、子供が描いた絵がテープで留めてある。これは、ペットの猫モーマスを描いた絵。『Glucks Garten』1階のアトリエに通う女の子が描いてくれたもの。サニタリーの窓際には、無造作に重ねられた何枚ものポストカードが。裏には友達からのメッセージが書かれていて、ガラス越しに外からも読めてしまうのだとか。所有しているモノの量は少ない。でも、部屋に飾られた1つ1つのモノには、大切な思い出が詰まっていそうだ。
たとえ小さな空間でも、これほどまでに素敵に住みこなすことができる。果林さんの部屋には、誰でもすぐに参考にできるインテリアのポイントがたくさんある。しかし、生活に対する姿勢や、誰とでもすぐに打ち解けてしまう底抜けた明るさは、長年の海外生活で身に染み付いたもの・・・すぐにマネできるものではなさそうだ。
2009年2月17日 『Glucks Garten』にて
撮影: 岩田啓治 取材・文: 和田亜弓
<今回の入居物件のご紹介>
神奈川県横浜市『Glucks Garten』
専有面積:22.10平米
竣工年:2007年2月
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