「ここは私以外の、誰が住むんだろう」
リビングに面する大胆なオープンバスが印象的なブルースタジオの物件『lagoa』。この部屋に住んでいるのは、フリーで様々なアート活動を行う春名めぐみさん。学生のときに上京して以来、ほとんど1年に1回の頻度で賃貸物件を転々をした後に、この部屋と巡り合った。
エリアなどの条件はあらかじめ絞込み、次に移る部屋を探していたときに、WEBでこの部屋を見つけた。その後、散歩がてら気軽な気持ちで部屋を内見したが、すぐに入居を決めることになった。
「お部屋に入ったときの直感的なインスピレーションで、本当にここは私が住まなくて誰が住むんだろうと思ったんです。それほどまでに、オープンバスという大胆な発想と、扉のないフラットな設計コンセプトが自分にフィットしました。」
入居の決め手となったのは、開放的なオープンバスと白くぬったレンガ壁。
「実は閉所恐怖症なんですよ。地下鉄も苦手ですし、これまで住んできた部屋のユニットバスにもずっと満足していませんでした。今は、本当に疲れている日以外は毎日、このお風呂につかっています。お風呂に入りながらデザインを考えたり、本を読んだりするのが好きですね。この板部分には、以外とたくさん物を置けるので気に入っています。」
部屋には自分で描いた絵がいくつも壁に飾られている。自分の作品をギャラリーのように飾ることができる白い壁も、この部屋に住む決め手となった。
考え尽くされてできたデザイン
玄関を入ってすぐの壁に掛けられた大きな1枚の絵。これは、現在描きかけのスカーフのデザイン。すべて手描き、繊細に細部まで描かれた花のモチーフが春名さんの作風だ。
「コンピューターだと、こうは描けないんです。偶然のゆがみや細部のディティールが生まれたり・・・その独特の風合いは人間の手にしか出せないものだから、敢えて手描きにこだわっています。」
引き受ける仕事には、納期を決めないことが条件、というものがある。この絵もその1つで、インスピレーションがふってくるのをこの壁で待っている。
「一昔前と比べて、作り手のこだわりを感じない“なんとなく”創られたモノが増えたなと感じます。そういうことは、使う方にも伝わるんですよね。例えばすごくシンプルなデザインの洋服でも、それがじっくり考え尽くされてできたものなら、着たときにシルエットが綺麗に出たりする。人の手に渡った瞬間に、なにかメッセージを感じ取ってもらえるようなモノ作りをしていきたいと思っていますが、そのためには、自分自身の暮らしをきちんとデザインして、心地よい生活を送ることが大切だと感じています。」
友達の輪
月に数回、多いときには16名もの友人をこの部屋に招き、ホームパーティを開くという春名さん。
「タイルの床は気に入っていて、友達がワインをこぼしたりしても、さっと拭くことができます。あと、家でものをつくることが多いのですが、水気のある材料をこぼしても大丈夫です。壁や天井のざっくりした感じとこのタイルのギャップも気に入っていますね。」
部屋には、いたるところに美しく生けた花が飾られている。これは花道の道に進んだ友人に生けてもらったもの。同じものづくりでつながる友達の輪が広がっていた。
生活の基盤をきちんとデザインすること
「この部屋を選んだことで、頭のなかでぼんやり描いていた理想のライフスタイルに近づいていったことは間違いありません。このオープンバスは、ある人にとっては無駄と感じられたり、奇抜ととらえられたり、受け入れられなっかたりすると思う。でも、私にとっては1番理想的な設計でした。」
今後、今のライフスタイルに変化があったとしても、この部屋と関わり続けたいと言う。例え自分が暮らす部屋でなくとも、作品を飾るギャラリーとしてだったり、生活の場とは違う、自分のもう1つの居場所としてだったり、使い方は様々。
「生活の基盤をきちんとデザインすることで、毎日の居心地の良さを楽しむことや、無駄なお金を使うのではなく、有意義なものへ投資をする使い方もできるようになる。自分の部屋を人に見せたくなる暮らしをするということは、とても大切なことだと思っています。」
いつか白い壁に絵を描きたいと話していた春名さん。これからも少しずつ手を加え、この部屋への愛着は積み重ねられていきそうだ。
2009年1月29日 『lagoa』にて
撮影:岩田啓治 取材・
文:和田亜弓(共にblue studio)
<今回の入居物件のご紹介>
東京都目黒区 『lagoa』
専有面積/40.67㎡
竣工年: 1970年9月
リノベーション完了: 2008年1月
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